1.L22PのHR1領域(aa130-172)に位置するGlu-132を他のアミノ酸に置換した変異蛋白を作製しこれらをBHKに発現させて解析したところ、Lys、ArgあるいはAlaに置換した場合はL22Pに比べて細胞融合誘導能が著明に低下したが、Aspに置換した場合にはL22Pと同程度の細胞融合誘導能が認められた。 2.近年報告されたニューカッスル病ウイルス(NDV)のF蛋白の三次構造をもとにL22Pの分子モデルを作成した。これに基づいてL22P分子表面の酸性アミノ酸の変異解析を行なったところ、132位と416位のアミノ酸の電荷が一致したときに細胞融合誘導能が亢進することを明らかになった。したがって、これらのアミノ酸が静電的に相互作用しているものと考えられる。すなわち、上記の分子モデルでは(aa94-156を欠いているために)不明であったHR1領域のN末領域の位置は、L22Pのヘッド領域の側面であることが示唆された。 3.HR2領域(aa453-477)の位置も上記の分子モデル(aa443-551を欠く)では不明である。そこでHR2領域を含むポリペプチド(aa420-484)を大腸菌で発現精製してマウスを免疫し、2種のモノクローナル抗体を得た。これらの抗体はWestern blotにおいてL22Pに対する反応性を示し、それぞれaa448-451あるいはaa446-451をコアエピトープとする抗体であることが判明した。次に、L22Pに細胞に発現させて蛍光抗体法により反応性を調べたところ、未固定では反応性が認められたが、ホルマリンで固定すると反応性が低下した。以上のことから、HR2領域のすぐN末側の領域(aa448-451)は分子表面に露出しているももの、わずかな構造変化で秘匿されやすい位置に存在していることが示唆された。
|