PIV2(Toshiba株)の感染性cDNAを構築した。このcDNAにモノクローナル抗体(M1-1A)のescape mutant(F13)のHNに存在する2箇所のアミノ酸変異を両方(Asp83Tyr+Met186Ile)あるいは単独(Asp83TyrまたはMet186Ile)にもたらす塩基置換を導入し、リバースジェネティクスにより3種の変異ウイルス(83/186、83、186)を回収した。これらのウイルスの生物学的性状を比較解析し、F13の弱い細胞傷害性(細胞膜-細胞膜融合の誘導能)がHNの2箇所のアミノ酸変異に起因することを立証した。この2箇所の変異を持つウイルス(83/186)の侵入(ウイルス膜-細胞膜融合)速度は親株Toshibaと同等であったことから、ウイルス感染細胞における細胞膜-細胞膜融合はHNだけでなく未知の宿主因子により制御されている可能性が示唆された。興味深いことに83/186はToshibaよりも極めて高い受容体破壊酵素(ノイラミニダーゼ)活性を示したが、ノイラミニダーゼ活性と細胞膜-細胞膜融合との関連は認められなかった。この結果はPIV3やムンプスウイルスの場合とは異なっており、特筆すべき知見である。また、83/186の高いノイラミニダーゼ活性が186位のIleに起因することも明らかになったが、これは186位のアミノ酸がHNのGlobular head領域の受容体結合部近傍に位置することに関連していると思われた。一方、83位のTyrはHN蛋白のStalk領域に位置していると考えられるが、Globular head領域に活性中心が存在する受容体結合活性やノイラミニダーゼ活性にも影響をあたえたことから、83位と186位のアミノ酸同士に機能的相互作用が存在し、これがPIV2の細胞傷害性に影響を与えていることが示唆された。
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