研究課題
C型肝炎ウイルス(HCV)は感染後慢性の経過をたどり、肝炎から肝硬変、肝癌へと移行していく。この病態には免疫系、特に細胞性免疫が関与していると考えられ、HCVに対する免疫系を調節することで病態の進行を防げると考えられている。我々は既に免疫反応の調節が可能な遺伝子としてインターロイキン4(IL-4)変異体遺伝子が有効であることを報告している。IL-4変異体はマウスIL-4のアミノ酸116Qと119YをDに置換することで作成した。116の変異体(IL-4SM)はIL-4のreceptorα(Rα)とcommonγ(γc)に結合し、116と119の両者を置換するとIL-4Rαとのみ結合する(IL-4DM)。このことからIL-4DMはIL-4のアンタゴニストであり、免疫反応をTh1に、IL-4SMは逆にアゴニストとしてTh2に誘導することが判明した。このIL-4変異体DNAを投与する遺伝子治療のベクターとしてHEVのVLPの可能性を検討した。VLPはCaイオン依存的に粒子を形成していることからVLP溶液内のCaイオンをキレートしVLPの分子間を広げDNAを封入した。このVLPが本来のウイルス構造を保存じているかを確認するためにDNA封入VLPを経口投与すると小腸粘膜上皮にDNAは導入され、本来のウイルス構造が保持されていることが確認された。さらに細胞内へのDNAの導入が可能であることがin vitroでも確認された。この様にVLPを用いて遺伝子治療に使用できる可能性が示された。このVLPとIL-4変異体遺伝子をもちいてHCV抗原発現トランスジェニックマウスに投与すると病態調節が可能であることが分かり、遺伝子免疫療法への臨床応用が期待された。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
臨床とウイルス 32
ページ: 362-371
Gene Ther. 11
ページ: 628-635