パラミクソウイルス科センダイウイルスの出芽に必要なウイルス蛋白質配列を同定し、さらに関連する宿主因子を探索することを本研究の目的とする。 (1)センダイウイルスのウイルス様粒子(VLP)産生系の確立と各ウイルス蛋白質の出芽に対する作用 センダイウイルスの構造蛋白質を発現するプラスミドを293T細胞に導入し、培養上清をショ糖密度平衡遠心で分画して、放出されたウイルス様粒子の蛋白質を定量した。同時に、細胞に残った蛋白質を定量して、出芽の効率を検討した。M・N・F・HNを同時に発現するとウイルスと同等の密度・形態をもつVLPができた。この研究の過程で、各ウイルス蛋白質の役割、および各蛋白質間の相互作用を明らかにすることが出来た。さらに、以前から出芽への関連が示唆されていた非構造蛋白質であるC蛋白質を同時に発現するとVLPの出芽効率が3倍程度に上昇した。(以上、投稿中) (2)センダイウイルス出芽に関与する宿主因子の探索 上記で確立したウイルス様粒子産生系を用いて、出芽に関連することが予想される宿主蛋白質について検討した。Vps4のドミナントネガティブ変異体でセンダイウイルスの出芽が阻害された。このことから、小胞体ベシクル輸送に関連するESCRT複合体が出芽に働いている可能性がある。一方、ESCRT複合体を出芽の場にリクルートするTsg101、Nedd4といったユビキチン関連蛋白質が出芽に関与するという結果は得られなかった。この働きをする蛋白質の探索が必要である。 以上のように、パラミクソウイルスの出芽についてVLP産生系を確立し、関連する宿主因子の解析を行った。今後は、このVLP産生系を使用して、出芽に中心的な役割を果たすM蛋白質の出芽に必要な領域を決定し、関連する宿主因子を明らかにする予定である。
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