研究概要 |
本研究では、パラミクソウイルスの出芽について以下の知見を得た。 センダイウイルスの構造蛋白質を発現するプラスミドを、複数組み合わせて、実際のウイルス粒子と同等の密度と大きさをもつウイルス様粒子を作る系を確立した(文献4)。これに関連して、N蛋白質単独発現で細胞内の宿主RNAが非特異的に包み込まれてヌクレオカプシド様構造物を作ることを示した(文献5)。 前述のVLP産生系で、センダイウイルスC蛋白質を同時に発現すると出芽効率が亢進することを見いだした。C蛋白質に粒子形成・出芽を促進する活性があることをはじめて示した。さらにC蛋白質が、宿主因子AIP1/Alixと相互作用することを見いだした(文献6)。C蛋白質は従来から抗インターフェロン活性が指摘され(例えば、文献3)、今回明らかになった出芽促進活性、他のRNA合成制御活性とあわせて多機能性であることを改めて示した。 一方、M蛋白質は単独に発現するだけで、効率よく培養上清に脂質と結合したリポソームとして放出され、出芽の原動力であると考えられる。M蛋白質単独発現による出芽は、センダイウイルスの出芽と同様にプロテアソーム阻害剤に影響を受けるので(文献7)、ユビキチンが出芽機構に関連していることが想定できる。また、M蛋白質による出芽はAIP1/Alixによってもっとも影響を受け、Tsg101,Nedd4にはあまり影響されなかったので、AIP1/Alix、ユビキチンが関連するエンドソーム膜輸送経路が出芽に関連することが推察される。M蛋白質とAIP1/Alixとの相互作用、結合モチーフも明らかになった(島津、入江、原稿準備中)。 以上のように、パラミクソウイルスの出芽に必要なウイルス蛋白質、それに必要なシグナル、関連する宿主因子が明らかになりつつある。発表済みのものに加えて、さらに成果を論文としてまとめる予定である。
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