EBVは、上咽頭癌、種々のリンパ腫、胃がんめ一部などにモノクローナルな感染が示されており、これらの癌の発生と進展に強く関与している。一方EBV陽性癌局所には、多数の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が浸潤している。CTLの癌細胞増殖抑制機能に関連して、今年度は以下の研究成果を得た。 1.標的抗原と考えられるLMP1およびEBNA1に対するCTLを効率良く誘導するために、in vitroで合成したmRNAを導入した抗原提示細胞を用いた。この方法で樹立したLMP1特異的CTLクローンはHLA-A*0206拘束性にEBV陽性NK細胞リンパ腫株を傷害した。EBNA1特異的CTLクローンはHLA-Cw*0303拘束性にEBV陽性リンパ芽球を認識した。種々の長さに短縮した抗原遺伝子発現プラスミッドや合成ペプチドを用いて、それぞれのCTLクローンが認識するエピトープ部位のアミノ酸配列を決定した。 2.研究代表者らがこれまでに同定したEBV-LMP2由来HLA-A24拘束性エピトープ(IYVLVMLVL)はインターフェロンIFNγ処理により生成が誘導されるため、免疫型プロテアソームがそのプロセスに関与している可能性が高い。IYVLVMLVL生成過程における免疫型プロテアソームの役割を詳細に検討するために、免疫型プロテアソームのサブユニットβ1i、β5iおよびプロテアソーム活性化分子PA28αの発現を特異的に抑制するshRNAを作成し、免疫型プロテアソームを恒常的に発現し内因性にエピトープを提示しているEBV陽性細胞にレトロウイルスを用いて導入した。当該エピトープに特異的なCTLクローンを用いて、short hairpin RNA導入EBV陽性細胞のCTLエピトープ提示能を解析した。β1i、β5iおよびPA28いずれの発現を単独で抑制した場合でも、当該エピトープの提示が抑制された。
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