研究概要 |
本研究ではリンパ球のリンパ節やパイエル板へのホーミングを支配する高内皮細静脈(high endothelial venule : HEV)に特異的な接着制御機構を明らかにすることを目的に解析を進め、以下の成果を得た。【1】L-セレクチンリガンドを形成する新しいシアロムチンコア蛋白質の同定:HEVの遺伝子発現解析結果に基づき、新しいシアロムチンコア蛋白質、EndomucinおよびNepmucinを同定した。Endumucinがムチン様ドメイン以外に既知の機能ドメインを持たないのに対して、Nepmucinはムチン様ドメインに加えてN末端にIgドメインを合わせ持つ。また、Nepmucinはリンパ節HEVに発現するがパイエル板HEVには発現しない特徴をもつことが明らかになった。【2】EndomucinおよびNepmucinのL-セレクチンリガンドとしての機能的な意義:リンパ節可溶化物と特異抗体を用いた解析から、EndomucinおよびNepmucinはともにHEV上でL-セレクチン結合性糖鎖修飾を受けることが示された。また、in vitroでL-セレクチン結合性糖鎖の生合成に必要な糖鎖修飾酵素群(フコース転移酵素TVII, L-selectin ligand sulfotransferase,コア2転移酵素など)を用いて、EndomucinおよびNepmucinコア蛋白質にL-セレクチン結合性を付加しflow条件下のローリングアッセイでL-セレクチンリガンド活性を解析した。その結果、適切な糖鎖修飾をうけたEndomucinおよびNepmucinはこれまでに同定されているCD34やGlyCAM-1と同様にリンパ球ローリングを媒介するL-セレクチンリガンドとして機能することが示された。また、ドメイン特異的な抗Nepmucin抗体やNepmucinの欠失変異体を用いた解析から、NepmucinのIgドメインはリンパ球の接着を直接媒介する可能性が示された。
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