研究課題
白血球が血管系から組織内に移行するためには、白血球の血管内皮表面でのローリング、内皮に提示されたケモカインによるインテグリン活性化、強固な接着、血管外への遊出といった連続したステップが起きることが必須である。われわれは、白血球に発現するP-selectin glycoprotein ligand-1(PSGL-1)が、血管内皮細胞に発現するP-セレクチンおよびE-セレクチンの生理的リガンドとして機能し、白血球ローリングを媒介することを明らかにしてきた。本研究では、白血球ローリングを調節する機構と考えられるPSGL-1の局在変化と、その白血球血管内皮相互作用における生理的意義を明らかにするため、マウスTh1細胞を用いてPSGL-1刺激による本分子の局在動態およびインテグリンを介する細胞接着に与える影響を解析した。Th1細胞表面のPSGL-1を抗PSGL-1抗体あるいはP-セレクチン-IgMキメラタンパク質と二次抗体を用いてクロスリンクすると、PSGL-1はキャップを形成し、さらにLFA-1の局在が変化し、LFA-1を介するICAM-Iへの接着が亢進した。さらに、Th1細胞がPSGL-1を介してP-セレクチン上をローリングするとICAM-1に対する接着が亢進することを見いだした。このことから、PSGL-1がセレクチンと相互作用することによりTh1細胞がローリングすると、PSGL-1の局在が変化すると同時にLFA-1の局在が変化し、ローリングから強固な接着へ移行する可能性が示された(J.Immunol.,2005)。また、PSGL-1がセレクチンと相互作用するだけではなく、特定のケモカインと結合しその機能を調節することを見いだした。なかでも、PSGL-1は皮膚特異的に発現するケモカインCCL27(CTACK)とPSGL-1のN末端領域の硫酸化チロシンを介して結合し、CCL27の受容体CCR10を発現する細胞のCCL27に対する反応性を低下させた。PSGL-1がケモカインの作用を制御しうることから、白血球の血管外遊走において、ローリングからケモカイン刺激により惹起される強固な接着へ移行するステップをPSGL-1が制御する可能性が示された(J.Biol.Chem.,2004)。
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