研究課題
基盤研究(C)
白血球が血管系から組織内に移行するためには、血管内皮表面でのローリング・活性化・強固な接着・血管外への遊出から成る連続したステップが起きることが必須である。われわれは、白血球に発現するP-selectin glycoprotein ligand-1(PSGL-1)が、血管内皮細胞に発現するP-セレクチンおよびE-セレクチンの生理的リガンドとして機能し白血球ローリングを媒介することを明らかにしてきた。しかし、白血球ローリングおよびローリングから強固な接着への移行がどのように制御されているか、その調節機構の分子基盤は明らかではない。本研究を通じて、われわれはローリングから接着への移行を制御しうる二つの機構を明らかにした。第一の機構は、PSGL-1によるシグナルがインテグリンを介する接着亢進を誘導することである。Th1細胞表面のPSGL-1のクロスリンクによりLFA-1を介するICAM-1への接着が亢進したこと、クロスリンク刺激はケモカイン刺激と協同的に働いたこと、さらにPSGL-1を介するローリングによりICAM-1に対する接着が亢進したことから、PSGL-1を介するローリングにより惹起されるシグナルが、ケモカインと協同的に作用してローリングから接着への移行を制御しうることが示された。第二の機構は、PSGL-1が特定のケモカインと結合しその機能を調節することである。ヒトPSGL-1はCCL27(CTACK)とPSGL-1のN末端領域の硫酸化チロシンを介して結合し、CCL27の受容体CCR10を発現する細胞のCCL27に対する反応性を低下させた。PSGL-1がケモカインと結合することによりその作用を抑制することから、自血球の血管外遊走において、ケモカイン刺激により惹起される接着へ移行するステップをPSGL-1が制御する可能性が示された。
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