研究概要 |
IL-6ファミリーサイトカインの受容体gp130のSHP-2結合領域のチロシン残基に変異(Y759F)を導入し、SHP-2を介する情報伝達経路を選択的に遮断したノックインマウス(gp130^<F759/F759>)は、脾臓・リンパ節腫大、自己抗体産生を伴う慢性関節炎を自然発症する。また関節炎抵抗性のC57BL/6・HTLV-1 pXトランスジェニックマウス(pX-Tg)にgp130Y759F変異が加わると重症関節炎が早期より発症する。この関節炎モデルマウスにおけるIL-6の役割を解析するためにC57BL/6に戻し交配したgp130^<F759/F759>(N5)、pX-Tg(N17)、IL-6^<-/->(N8)の交配により3重変異マウスgp130^<F759/F759>pX-TgIL-6^<-/->を作成し,関節炎の発症と病態を解析した。gp130^<F759/F759>pX-TgIL-6^<-/->はgp130^<F759/F759>pX-TgIL-6^<+/+>と比較して6ヶ月齢における関節炎罹患率と重症度は軽度であり、X線検査と組織学的解析でも軽症化が確認された。gp130^<F759/F759>pX-TgIL-6^<+/+>で認められた脾臓腫大、高γ-グロブリン血症、自己抗体産生および好中球、マクロファージ、メモリー型/活性化T細胞の増加、CD11c+細胞中の成熟樹状細胞の頻度の減少といった異常は、gp130^<F759/F759>pX-TgIL-6^<-/->において著明に軽減していた。免疫染色によりgp130^<F759/F759>pX-Tgの関節滑膜表層およびその下層におけるIL-6産生細胞とリン酸化STAT3の核への局在を認めた。gp130^<F759/F759>pX-Tgにおける免疫・血液系の異常、関節炎の発症および病態の進行にIL-6/gp130/STAT3の信号伝達が中心的役割を担っていることが示された。
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