研究概要 |
血清中のマンノース結合レクチン(MBL)やフィコリンは生体防御レクチンと呼ばれ、自然免疫に重要な役割を担っていると推定されている。MBLとフィコリンにはセリンプロテーゼMASPが結合しており複合体を形成している。これらの生体防御レクチンが一旦異物上の糖鎖に結合するとMASPが補体成分C4とC2を活性化して補体系が作動する(レクチン経路)。ヒトとマウスでは、3種類のMASP(MASP-1,-2,-3)と低分子量蛋白のsMAPがMBLとフィコリンに結合している。各MASPとsMAPの機能については、MASP-2がCls様にC4とC2の限定分解をすることが明らかとなっているが、その他の成分については不明な点が多く残されている。最近、我々はヒトMASP-1/3画分が血液凝固系成分の一つの第IX因子を活性化することを見い出した。この事実は生体防御レクチン-MASP複合体が補体系のみでなく、血液凝固系にも働いて異物排除に関与している可能性を示唆しており、本研究はそれを明らかにすることを目的とする。本年度は次の主な成果を得た。1、ヒトMASP-1/3画分は第IX因子の他にフィブリノーゲンを活性化した。2、ヒトMASP-1/3画分は溶液中でも第IX因子を括性化するが、イオン交換樹脂に固定化することにより、即ち固相において強い活性化を示すことが明らかとなった。3、リコンビナントMASP-1は第IX因子に対して分解活性を示した。4、酵母細胞壁成分のザイモザンにはMBL-MASPが結合してレクチン経路を活性化することが知られている。ヒト血清を処理したザイモザンは未処理のザイモザンに比べて血漿の凝固を促進することが明らかとなった。
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