B細胞および胸腺細胞でClast5を強制発現させたトランスジェニック(Tg)マウスを作製し解析を行った。Clast5-Tgでは、体重はコントロールと変わりないものの、脾臓や胸腺が小さく、脾細胞数、胸腺細胞数ともには約半分以下に減少していた。脾臓・胸腺細胞数の減少は若いマウス程顕著であったことから、Clast5の強制発現が免疫系の発生初期におけるリンパ球数の急速な拡大に対し、抑制的に働くことが示唆された。また、Clast5-Tgの胸腺においては、CD44+25+のPro-T及びCD44-25+のPre-T細胞が減少し、初期T細胞の分化、増殖が阻害されていた。骨髄ではPro-B及びPre-B細胞が明らかに減少し、初期B細胞分化が著しく障害されていることが分かった。さらに、コントロールに比べ、Clast5-Tgマウスの成熟B細胞は、in vitroでは抗原刺激に対する増殖反応性が低下し、in vivoではT依存性抗原であるDNP-OVAに対する抗体産生能が低下することが判明した。これらの結果より、Clast5はリンパ球の増殖と活性化を抑制する転写因子であることが示唆された。一方、Dr.Tanejaらとの共同研究により、Clast5ノックアウトマウス由来のB細胞について解析を行ったところ、骨髄におけるB細胞の初期分化に異常が見られた。しかしながら、成熟B細胞の抗原刺激に対する応答性は正常であった。以上の結果より、Clast5はB細胞の分化、成熟および活性化において重要な役割を果たしていることが示された。さらに、ノックアウトマウスの解析結果より、Clast5以外のB細胞の活性化を抑制する因子の存在が示唆された。
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