研究概要 |
Toll-like receptors(TLRs)は、細菌やウイルスの構成成分を認識し炎症性サイトカインやインターフェロンの産生、樹状細胞の成熟化を誘導する一群の膜タンパク質である。ヒトでは10種類存在し、微生物由来の糖、蛋白、脂質を認識するグループと、核酸を認識するグループに大別される。ウイルス特有の構成成分であるdsRNAを認識するTLR3は、TICAM-1という新規アダプター分子を介してタイプIインターフェロン、特にIFN-beta産生を誘導することを昨年度明らかにしたが、TICAM-1の下流のシグナル伝達分子、並びに、リガンド認識機構に関しては不明であった。今年度報告者らは、シグナル伝達分子の同定と抗TLR3mAb(TLR3.7)を用いた局在解析を行い、以下の結果を得た。IFN-beta遺伝子の転写には転写因子のIRF-3が必須であるが、TICAM-1の下流でNAP(NAK associated protein)-1が、IRF-3をリン酸化するkinase、TBK-1とIKK-εと複合体を形成し、IFN-beta産生へのシグナルを伝達することを明らかにした。NAP-1はTICAM-1とも複合体を形成するが、直接の結合は見られず、別の分子の介在が予測された(Sasai et al., J.Immunol.2005)。TLR3.7を用いた解析より、TLR3は骨髄系樹状細胞の細胞内顆粒に存在し細胞表面には存在しないこと、リンパ系樹状細胞には発現していないことが明らかとなった。TLR3が存在する細胞内コンパートメントは既知のオルガネラマーカーでは染色されず、TLR9とも共局在せず、未同定のエンドソーム様顆粒であることが推察された(Matsumoto et al., J.Immunol.2004, Funami et al., Int.Immunol.2004)。更に、TLR1,TLR2,TLR6に対するmAbを作製し、糖、脂質認識のTLR1,2,6は単球の細胞表面にパッチ様に発現することを示し、対応するリガンドによりTLRの発現および局在が制御されていることを初めて明らかにした(Nakao et al., J.Immunol.2005)。
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