医原現場でのコミュニケーション学習と評価には、模擬患者の存在が不可欠であるが、臨床医学教育への幅広い導入には多くの問題を抱えている。身体診察には応じないこと、コミュニケーションが困難な状況や「悪い知らせ」、患者教育など高度な面接学習のための模擬患者が乏しいこと、稀ではあるが学習が必要とされる症例を演じるシナリオが開発されていないこと、模擬患者の学習者評価の信頼性が十分に検討されていないこと、絶対数が不足していることなどが挙げられる。今年度は、面接から診断、治療の全ての診療過程と、高度な面接技能の学習に対応できる模擬患者を養成し、患者シナリオの開発を行った。さらにそれらのシナリオを用いて医学部学生の面接実習を行った。 1.新たな模擬患者の応用に関する検討 模擬患者が新たに模倣、演ずる診療場面として、患者への検査結果、診断の説明、「悪い知らせ」、今後の治療方針の相談、患者教育・禁煙支援に関する設定を選択し、シナリオの開発を行った。医学部学生の授業において、模擬患者と学生の行う診療場面をビデオ撮影し、学生からの意見を調査した。個々の場面について、医学的症状、患者の心理反応、対処行動等、患者としての正確さと、対応する学習者の行動について患者の立場から分析し、模擬患者トレーニング、実習の進め方、フィードバックを含めた学習者の評価項目の基礎データを収集した。 2.模擬患者評価に関する検討 既に行った初診時外来設定における医療面接ビデオを模擬患者が再評価し、評価項目、概略評価とスケールについて検討を開始した。測定範囲の広い評価項目の設定を検討中である。OSCEでの模擬患者と教官評価の相違についても検討を行っている。
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