1.OSCEにおける模擬患者SP評価と教員評価の比較検討 SPが医療面接終了後に、面接の構造、情報収集、会話の技能領域の評価と総合評価を行う評価表を作成した。医学部4年を対象とした共用試験医療面接ステーションにおいて、2名の教員評価とSPが学生評価を行った。ビデオを観察して評価した教員とSPの標準評価を作製し、各評価の信頼性、標準評価との一致率、教員2名間および教員とSPの評価の相関を総合点、および領域別に検討した。SPは10分の面接後、面接全体の評価を記載することが可能であった。SP評価は教員と同等の信頼性であった。標準評価との一致率は教員よりやや低いが、70%以上と満足できる結果であった。面接構造、情報収集は高い一致率を示し、評価経験のある会話技能よりも良好であった。教員とは全ての領域で有意な相関が認められた。しかし、会話技能は相関が比較的低く、患者の立場で評価しているSP評価を、学生の評価として尊重すべきと考えられた。今回の解析により、SPはOSCEにおいて、教員と同等の質の高さで医療面接全体を評価できることが示された。今後評価者としての役割をSPが担うことについて、その妥当性が示された。 2.SPを活用した教育カリキュラムの検討 開発を続けてきた様々な診療場面のシナリオの開発に加え、SPの養成を行い、実際の医学部カリキュラムに応用した。「医学情報を患者に伝え自己決定を促す」「患者の心理社会的因子を考慮した生活・習慣・医療の継続に関する指導」「悪い知らせを伝える」という場面の患者シナリオを専門医とSPの協力を得て作製した。授業や教員教育でそれらを用い、学習のねらいにそった口頭でのフィードバックと、評価表による評価ができるSPを養成した。事前教育や講義も合わせて、模擬患者による実習を効果的に行う学習を立案し、新しいコミュニケーション教育を実現した。
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