重症患者を扱い、高額な医療費のかかる部門とし認識されている集中治療部門において、実施されている医療行為の及ぼす影響を、経済性の面も加えて検討する。そして、経済効果も踏まえた集中治療部門での医療の標準化を図り、医療の質を向上させ、安全に医療を提供することができるように改善を行うことに結び付けていくことが目的で、今年度は以下のことを行った。 集中治療室に入室した全患者について、院内感染の発症の有無と病院転帰についての解析、検討したところ、以下の結論を得た。 当院集中治療室内での院内感染発症率は、尿路感染、血管内留置カテーテル関連血流感染は殆ど発生していなかった。これに対し、人工呼吸器関連肺炎の発生が集中治療室内での院内感染として最多であった。全国平均と比較すると、1年間の発生数でみると全国平均を上回ることはなかった。しかし、年間の発生数が少ないため、単純に他施設と比較することはできないという問題点が浮上してきた。昨年度得られた結果の検討事項として、一般病棟での院内感染のアウトブレイクの関与の有無があげられたが、今年度の発生数からみても、集中治療室での院内感染発生は少なく、一般病棟での院内感染発生の方が問題点としては大きいと思われた。 データ解析上のシステムの不備の検討は、ソフトウエア開発グループと検討会議を開き、具体的にデータを入力して検討をおこなった。これにより、解析の信頼度が上がったことが予想される。 次年度は、引き続き、院内感染対策サーベイランスを継続することで、患者のデータ数を増やし、患者転帰や患者の入院日数に影響を与えるかどうか(感染症を獲得することで、死亡の増加と入院期間の延長がおこるかどうか)を検討する。さらに、前年度から得られた結果、集中治療部門では、人工呼吸器関連肺炎の管理が重要である点について、医療費に対する影響を調べる予定である。
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