研究概要 |
本研究では、客観的臨床技能試験(OSCE)での医療面接の評価を、より正確で客観性のあるシステムにすることを目的としている。現在、医療面接の評価で広く使用されている採点表は、1)面接における態度・マナーと、2)診断のための患者情報の収集である。そこで、この評価表の妥当性、客観性を検討するために、1)の8項目と、2)の13項目、合計21項目について、本学の学生が病棟実習前・後に受けるOSCEの成績から解析した。また、同時に行われる模擬患者(SP)評価も参考にした。成績の検討は、平成13、14年度および15年度の3年間を対象とした。その結果、この3年間の病棟実習前・後の面接評価の平均値は、平成13,14,15年の前後では(32点満点)22.7±3.6、24.7±3.3、と23.1±3.2、24.0±3.4、および23.5±3.1、23.9±3.5であり、実習前後の得点には有意差がみられなかった。医療面接を評価した評価者の印象では、実習後には学生の面接技能は明らかに向上したと思われたが、評価の得点に差が出なかった。即ち、評価の採点基準や採点方法に問題があると思われた。 そこで、OSCE医療面接で同時に行われた教員と、一種のゴールドスタンダードである模擬患者の評価について、両者の間の評価の差を詳しく解析した。その結果、全体的には教員とSP評価は良く相関するが、成績不良者では両者の間に有意の差がみられた。そのため、さらに、病棟実習中に行った医療面接について概括的評価を取り入れて面接評価の検討を行った。すなわち、模擬患者の評価に、概括的評価である「次もこの医師にかかりたいと思うか」の質問を加えて、概括的評価とその他の項目の相関を多変量解析を用いて調べた。その結果、概括的評価と関連性が強かった項目は「患者の抱える問題に対して傾聴する態度」に関することであり、概括的評価の有用性の高いことが明かとなった。今後、OSCEにおける面接評価の客観性を高めるためには、概括的評価の導入が必要であると考えた。
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