研究概要 |
臨床技能の教育で求められるものとしては,良好な医師患者関係を築く技能,コミュニケーション技法,情報収集能力,総合的判断力,問題解決能力などがあげられる。このような能力は,入学後,「受け入れて,反応して,内面化する」ことができる人と,できない人がいる。医学部には,内面化できる学生を選抜する入学試験を行なうことが求められている。そのような選抜試験を行わなければ,教員は内面化できない学生に対する愚痴をこぼし,大学は社会に対する説明責任を果たさないことになる。高知大学医学部ではこのような観点に立ち,2001年度から3年次学士編入学方式(定員5名),2003年度からAO(態度評価)方式(定員20名,2006年度から30名)を導入した。いずれも一定の学力を筆記試験で確認した定員の2〜4倍の受験生に,最終選考として約9時間にわたる態度・習慣領域評価および面接を行なうもので,最終選考では筆記試験の成績は考慮しない完全分離方式である。 そこで、本研究では、これらの各方式で入学した学生を対象として、他の方式で入学した同学年の学生および教官によるピア・レヴューを実施し、入学後における情意・技能面での態度を多変量解析法にもとづき調査・分析した。その結果、入学者選抜段階と入学後における態度評価スコアに高い相関が認められ、現在の入学者選抜において用いている態度評価尺度の妥当性が検証された。今後、これらの入学者の追跡調査を卒業および卒後臨床研修段階まで継続的に実施することにより、この態度評価尺度の妥当性に関する調査・分析をさらに推進させる予定である。
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