国民ひとり一人の生涯に亘る健診情報を一元的に活用するデータベース構築が検討されている。しかし、多種多様な施設で異なる形式で管理された健診情報を一箇所に集約するためには、事前に標準化された情報交換規約を整備しておかなければならない。 本研究では、健診情報を伝送し情報交換するシステムの理論設計モデルを実際の情報交換に適用し、システムの有用性や問題点を検証した。検証方法は、インターネット網を通じて、表記方式が相違する文字情報、数値情報の形式のA機関の3年間の健診情報を、情報交換のための定義済み辞書ファイル(交換規約)を経由してB機関の健康管理ファイルに収録する伝送システムを利用した。 その結果、文字情報の誤認識率は、47.5%で、数値情報の誤認識率は、6.4%であった。文字情報の誤認識の原因は、電子化された情報の表記方法からいえば、半角文字・全角文字の不統一、特殊なギリシャ文字の混在が主なものであった。しかしながら、歴年の健診情報は、健診情報を生成する施設が数年ごとに相違することなど、電子化以前の情報の基本構造の違いに由来する誤認識の問題も明らかとなった。一方、誤認識の原因として文字、数値情報ともにパソコンの発達がもたらした多種多様な文字フォントの出現の影響もあり、意味論的(セマンテック)な辞書機能の整備に加え、情報交換を行う施設相互のフォント辞書の統一と充実が欠かせないことが示唆された。 次年度は、上記の実証結果をふまえ、実用システムの視点から評価を行い、健診情報の伝送交換システムの実用化に向けた課題を整理する。
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