ヒトの生涯に亘る健診情報を一元的に活用するデータベース構築が検討されている。しかし、多種多様な施設で異なる形式で記録された健診情報を事後的に利用するためには、通例では、標準化された情報交換規約を事前に整備しておかなければならない。 昨年度の本研究では、健診情報を伝送し情報交換するシステムの理論設計モデルを実際の情報交換に適用し、システムの有用性や問題点を検証した。その結果、文字情報の誤認識率は、47.5%で、数値情報の誤認識率は、6.4%であった。誤認識の原因は、半角文字・全角文字の不統一、特殊なギリシャ文字の混在が主なものであった。しかしながら、健診情報を生成する施設が数年ごとに相違することなど、電子化以前の情報の基本構造の違いに由来する誤認識の問題も明らかとなった。一方、誤認識の原因として文字、数値情報ともにパソコンの発達がもたらした多種多様な文字フォントの出現の影響も多大であった。 以上の結果を受けて、16年度は、上記の実証結果の評価から、健診情報の伝送交換システムの実用化に向けた課題を整理した。過去に遡った暦年の個人情報を連結し、そのデータの時系列化を達成したり、日進月歩の医学的進歩の中で新規技術として登場して来る新健診項目に対処するためには、意味論的な辞書機能の整備に加え、情報交換を行う施設相互のフォント辞書の統一と充実が欠かせないことが示唆された。健診活動を通して派生する文字情報と数値情報の「健康情報類語辞書」を整備することが解決策として重要と考えられた。現行の人工知能技術と健康情報類語辞書を組み合わせることによって、個人毎の健診情報の一元化が可能になることが予測される。
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