研究概要 |
ナトリウム代謝関連遺伝子である腎曲尿細管サイアザイド感受性Na-Cl共輸送体(TSC)の機能異常は、高レニン血漿を呈するGitelman症候群として知られており食塩感受性高血圧の鏡像と考えられている。したがって、食塩感受性高血圧の遺伝的背景の解明にはTSCの解析が欠かせない。今年度も昨年度に引き続き学内外の新たなGitelman症候群の臨床症例7例についてTSCの遺伝子解析を行った。 PCRダイレクトシーケンス法によりイントロンの一部を含む26エクソン全ての塩基配列を決定し変異を検出した。同時に、PCR-RFLP法等により変異塩基配列の確認を行った。その結果、6例に、Arg399Cys、Leu849His、Arg955Gln、1098del C(3C/2C)、1926del C(5C/4C)、785ins 18の6変異が検出された。その内ホモ型は3例、ホモ型+コンパウンドヘテロ型が1例、コンパウンドヘテロ型が2例であった。今回、第16エクソンの1926del C(5C/4c)ナンセンス変異を認めた症例は、青森県の症例であった。即ち、前年度までの解析結果と同様に本変異は、北東北における集積が特徴的であるという知見をさらに裏付ける結果であった。 また、地域住民におけるTSCの変異検出頻度を検討するために、「岩木健康増進プロジェクト」に参画した。受診者1,407名で、血清K値が3.5nmol/l未満の低K血症26名についてTSC遺伝子解析を行った。その結果、6例にThr180Lys、Leu849His、Arg919Cysの3変異が検出された。その内コンパウンドヘテロ型が1例、ヘテロ型が5例であった。低K血症26名における変異型アリルの検出頻度は13.5%であることから、受診者1,407名での変異型アリルの検出頻度は少なくとも0.25%以上であることが推定された。
|