脳梗塞や心筋梗塞などの動脈血栓性疾患が増加しているが、それらの再発防止を目的として抗血小板療法や抗凝固療法が行われている.抗凝固療法に用いられるワーファリンはトロンボテストによるINRが治療のモニタリングに使用されているが、抗血小板療法では確立されたモニタリング法がない.一部では血小板凝集能によるモニタリングが試みられているが、血小板を分離する必要があるなど測定が煩雑で結果を得るまでに時間がかかるため広く行われるに至っていない.そこで、全血のままで血小板機能を評価する測定系を確立した(改良型コラーゲンビーズ法). 血小板機能はコラーゲンをコーティングしたビーズを詰めたカラムを作成し、血小板停滞率を指標として評価した.すなわち、血液をシリンジポンプで改良型コラーゲンビーズ内を通過させ、出てきた血液の血小板数の減少率を、カラムを通過させない血液の血小板数に対する割合として算出した(血小板停滞率). 本測定系を用いてin vitroで血小板機能の評価を行ったところ、ADP受容体阻害剤により抑制されたが、アセチルサリチル酸では抑制はわずかであった.この結果よりADPに依存した血小板活性化を評価する測定系として有用であると考えられた.そこで、ADP受容体阻害を主作用とする抗血小板薬、チクロピジンの薬効評価を試みた.チクロピジンを1週間連続投与し、その前後で血小板機能を評価したところ、チクロピジンの服用後に血小板停滞率は有意に減少していた.これらの結果から、改良型コラーゲンビーズ法は全血を用いて簡便に行える抗血小板薬のモニタリング法として応用可能と考えられた.
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