研究概要 |
本研究は、2原子酸素添加酵素のカテコール2,3-ジオキシゲナーゼ(Mpc)とその基質の4-クロロカテコール(4-CC)とからなる高感度酸素絶対測定系を組織や細菌の酸素消費速度の定量的測定に応用し、薬物の有効性や毒性・抗生物質感受性の迅速な定量方法を開発することを目的に実施した。その結果、以下の成果が得られた。 1.酸素濃度ゼロ緩衝液供給システム シリンジ中の緩衝液の溶存酸素をMpc-4-CC系で除去し、未反応4-CCと酸素を取り込んだ生成物(5-クロロ-2-ヒドロキシムコン酸セミアルデヒド、CHMSA)とのトラップカラム(逆相系と強アニオン交換用ゲルをタンデムに充填)を通して送液することで、即時に酸素濃度ゼロ緩衝液を作成・供給できる。 2.酸素濃度検出用Mpc固定化ゲルの作成 Mpcの強結合拮抗阻害剤である2-ヒドロキシピリジンN-オキシド(2-HPNO)を安定化剤として用い、耐圧性活性化ゲル(TSKgel AF-Tresyl Toyopearl)にMpcを高密度固定し、高活性で長期間安定な酵素固定化ゲルを作成した。本ゲルを充填したミクロカラム(1.0mm×30mm)は、流速0.1mL/minで酸素と4-CCを加えてもほぼ反応を完了させる。 3.0-250μMの任意酸素濃度の緩衝液供給システム 酸素ゼロ緩衝液と空気飽和緩衝液を2系統のシリンジポンプで混合・供給して反応系の酸素濃度を自由に制御できることを実証した。酸素のinとoutを同時に制御・モニターする還流型反応装置のプロトタイプも作成した。 4.ミクロスケール(100μL)フロンタルゲルろ過法(FGC)の実現 タンパク質-リガンド系の結合曲線を実験的に求められる比類のない方法であるFGCが、100μLの微量サンプルで可能になった。 5.Mpc-2-HPNO複合体の結晶化に成功し、その予備的結晶構造解析を行なった。
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