甲状腺ホルモンのリンパ球サイトカイン産生に対する影響に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15590487
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 日高 洋 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (30243231)
• キーワード: バセドウ病 / 甲状腺ホルモン / Th1 / Th2 / IFN-γ / IL-4

研究概要

自己免疫性甲状腺疾患における疑問((1)バセドウ病患者において、治療により甲状腺機能が正常化するとTSHレセプター抗体価が低下するが、なぜ低下するのか不明。(2)破壊性甲状腺中毒症において、破壊の期間は通常3ヶ月以内であるが、なぜ破壊が一過性であるのか不明)を説明できる仮説(甲状腺ホルモンがTh1を抑制し、Th2を刺激する)を考案したので、本研究でそれが正しいか明らかにする。仮説による上記疑問の説明は、(1)甲状腺機能正常化→Th2刺激の抑制→Bリンパ球刺激の抑制→TSHレセプター抗体産生低下、(2)破壊性甲状腺中毒症により甲状腺ホルモン上昇→Th1の抑制→細胞傷害性リンパ球刺激の抑制→甲状腺破壊の抑制→破壊が一過性で終結するというものである。今年度は、甲状腺ホルモンのTh1サイトカイン、Th2サイトカイン産生に対する影響をin vitroで検討した。末梢血をヘパリン採血後、全血をそのまま甲状腺ホルモンT_3(トリヨードサイロニン)100nM存在下および非存在下で24時間培養した。全血よりQIAamp RNA Blood MiniでRNAを採った後、Invader RNA AssayでTh1サイトカインとしてIFN-γ、Th2サイトカインとしてIL-4のRNA量を測定し、コントロールとして用いたGAPDHとの比を求めた。IFN-γ/GAPDHはT_3非存在下に比較してT_3存在下では112%、IL-4/GAPDHはT_3非存在下に比較してT_3存在下では126%で、T_3存在下でIFN-γが軽度、IL-4が中等度の増加を認めた。しかしながら、Invader RNA Assay標準曲線の測定下限レベルのIFN-γ量(0.03amol/5μl)、IL-4量(0.015amol/5μl)で比較しており、標準曲線の中間部分で比較するためには培養時にPHAなどで刺激する必要があると考え、来年度に検討する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Nobuyuki Amino: "No increase of blocking type anti-thyrotropin receptor antibodies during pregnancy in patients with Graves' disease"Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism. 88・12. 5871-5874 (2003)
• [文献書誌] Keiko Takeoka: "Increase in serum levels of autoantibodies after attack of seasonal allergic rhinitis in patients with Graves' disease"International Archives of Allergy and Immunology. 132・3. 268-276 (2003)
• [文献書誌] Susumu Tanaka: "Autoantibodies against four kinds of neurotransmitter receptors in psychiatric disorders"Journal of Neuroimmunology. 141・1-2. 155-164 (2003)
• [文献書誌] Yukiko Izumi: "Relation between postpartum liver dysfunction and anti-cytochrome 2D6 antibodies"American Journal of Reproductive Immunology. 50・4. 355-362 (2003)
• [文献書誌] Nobuyuki Amino: "Association of seasonal allergic rhinitis is high in Graves' disease and low in painless thyroiditis"Thyroid. 13・8. 811-814 (2003)
• [文献書誌] Nobuyuki Amino: "Possible induction of Graves' disease and painless thyroiditis by gonadotrophin-releasing hormone (GnRH) analogues"Thyroid. 13・8. 815-818 (2003)