ミオシンはATPの化学的エネルギーを運動エネルギーに変換することで、アクチンとの相互作用を通じて筋収縮、細胞運動、細胞内物質の運搬などに関与している。ミオシンは重鎖で分類されたミオシンスーパーファミリーを形成し、さまざまなクラスに分類されてきている。ミオシンはミオシンIとミオシンIIに分類されます。ミオシンIは単頭の非従来型ミオシンまたはミニミオシンと、一方ミオシンIIは双頭の従来型ミオシンと呼ばれている。 MYH9(myosin heavy polypeptide 9)の細胞内局在を観察するためにgreen fluorescent protein(GFP)とGFP-MYH9融合蛋白を作製し、HeLa細胞にセルフェクチンを使って導入した。MYH9の局在はF-アクチンと共存していたが、一方で中間径フィラメントのチュブリンとは全く局在が重ならなかった。さらにアクチンを脱重合させるサイトカラシンDで処理すると、F-アクチンの局在は見られず、アクチンファイバーが存在しないことを示していた。同時にGFP-MYH9もまた細胞内で局在を示さずF-アクチンとの共存を裏付けていた。GFPのみを発現させた実験では細胞内に広くEGFPが存在しており、局在が無かったことから、これまで言われているようにGFP単体はアクチンやミオシンをはじめとする細胞内骨格蛋白とは結合性を示さないことが確認できた。GFP-MYH9は細胞辺縁部F-アクチンと全く同一の場所にのみ局在が示されており、非筋型ミオシンMYH9も他のミオシンと同様にアクチンと局在が重なることがわかった。このようにレポーター分子としてGFPを利用することにより、細胞の固定、蛍光染色によって生じる抗原性の変化、局在性の問題などが回避でき標的蛋白の機能を損なわず、生きた状態の細胞を観察することが可能となった。 そこで近年、遺伝子の解析から知られるようになったMYH9突然変異を原因とする常染色体優性遺伝性のMYH9関連疾患(巨大血小板性血小板減少症)のメカニズムを解明することを目的として、組換え変異ミオシンをGFP融合蛋白として細胞内に発現させて、アクチンとの相互作用、細胞の機能変化さらに蛋白質発現変化を検索するにより疾患の確定診断および遺伝子治療に結びつける。
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