アミロイドーシスの診断は生検によりなされるが、これは侵襲的であること以外に生体のアミロイド沈着量、その局在を評価できない欠点がある。本研究では、すべてのタイプのアミロイド沈着に存在する成分、アポリポ蛋白E(アポE)に注目し、標識抗アポE抗体を投与することによりアミロイド沈着の局在診断の可能性を検討することを目的とした。背景には、アミロイド沈着内で断片化したアポE部分を特異的に認識するモノクロナル抗体を得ていたこと、ヒトアポEを発現するノックインマウスを供与されたことによる。 抗体のF(ab)2化やアイソトープ標識の基礎検討を経て、標識抗体をアミロイドーシス惹起マウスに投与した。アミロイドーシス含マウスの脾、肝、腎、消化管に放射活性は有意に高く集積すし、組織学的にも脾のアミロイド沈着部分に弱いながら結合することが確認され、抗体がin vivoでアミロイド沈着に結合することが示された。ただし、流血バックグラウンドの放射活性が高く、イメージングへの応用には進むことができなかった。またアミロイド沈着への取り込みにより抗体の半減期が短縮することを期待したが、当該マウスでその成績は得られなかった。この抗体投与による、アミロイドーシス予防効果、沈着吸収の促進効果は確認されなかった。 成績を全体的に考察するとこの戦略の妥当性は示唆されたが、抗体の親和性が弱いことが懸念され、現在のところは複数の抗体を採取して、再検討する段階である。ヒトへの応用についてはマウスレベルでのさらなる検討が必要と考える。
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