血液ガス分析値の標準化に際し、正確さを伝達できる機能を備え簡便に使用できる実試料標準物質として、トノメトリーされた血液、および精度管理用バッファータイプコントロール物質の適合性について検討した結果、血液ガス測定用標準物質が電極に対する特性・ヘモグロビンを含んでいる・操作が簡単および真値へのトレーサビリティ体系にあるなどの点で最も適していた。 次に、血液ガス測定用標準物質を使用した正確さの調査(EQA:External Quality Assurance)を石川・富山および福井の3県の臨床検査技師会と共同で2003年と2004年に実施した。その結果、1.pHおよびpCO_2は殆どの機種でほぼ正確に測定されているが、pO_2は高値試料で大きなバラツキを示した。これは、酸素解離曲線の傾きが小さい部分(100mmHg以上)に表示値を設定すると理論的にバラツキが大きくなりやすいことによるものであり、2004年のEQAではpO_2の設定値が前年より低く設定されたのでバラツキはやや少なくなる傾向を示した。 2.血液ガス測定用標準物質の測定値と表示値の関係から作った補正式により結果の収束率が全ての項目で顕著に改善されたので、実試料(血液)においても同様の結果が期待される。 3.参加台数が10台以上の5機種について測定値の機種間差を検討した。pHは統計学的には有意差を示した組み合わせが幾つかみられたが、その差は小さく、全て許容範囲内の差であった。pCO_2およびpO_2については統計学的にも機種間差は無かった。 以上、血液ガス分析値の標準化には現状では血液ガス測定用標準物質が最も適している。しかし、i-STATのような新しいタイプのセンサーを有する装置では血液ガス測定用標準物質は血液とは異なる特性を示すことも分かったので、今後、この点に関する取り組みが必要である。
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