本研究の目的は、末梢血中に存在する微量の腫瘍細胞(具体的には急性白血病細胞を対象とする)を感度よく検出する手法を開発することである。筆者らは既成の自動血球分析装置のスキャッタグラムを用いて、白血病細胞を検出するための指標として側方蛍光強度、既成の幼若細胞出現チャンネル、さらに好塩基球出現チャンネルに現れる細胞集団を対象として、それぞれのチャンネルにおける出現程度をスコア化し、あらたな幼若細胞検出スコアリングシステムを考案した。 患者末梢血を用いて、上記スコアリングシステムの検出力を目視法との比較で検討したところ、血液1マイクロリットルあたり数個の骨髄性白血病細胞を検出できることが確認された。検査特性として感度・特異度ともに良好な成績が得られたが、リンパ性白血病細胞では検査特性が劣ることもわかり、現段階では本検出法は専ら骨髄性白血病適用される方法とみなされた。 急性白血病の治療効果判定や再発の早期発見のためにいわゆる微小残存腫瘍細胞(minimal residual disease;MRD)を効率よく検出することが望まれている。PCR法を用いた白血病特異的遺伝子発現の検出法や高感度フローサイトメトリー法が重用されている。今回我々が考案した手法は、検出感度の面で上記2法に劣るものの、末梢血を用いてルーチン検査の延長線上で簡便に、低コストで実施できることから、今後臨床的有用性が期待されるものといえる。検査特性の改善に向けて、現在さらなる検討を続けている。
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