研究概要 |
国内外で行われた既存のフィールド調査結果を利用し,騒音評価において騒音感受性の評価が不可欠であるかどうかを検討した。既報の騒音感受性評価尺度であるWeinstein scaleあるいは不快感に関する質問を利用し,高感受性群と低感受性群に分けて主観的健康度との関連を調べたところ,感受性の違いにより主観的健康度と騒音曝露量との間の量反応関係に違いのあることが明らかとなった。 次に,実験室において既報の騒音感受性尺度などを含めた質問紙調査とピンクノイズを用いた騒音曝露実験を行い,騒音の「うるささ」と騒音感受性評価尺度との関連を検討した。その結果,Weinstein scaleおよび大きな音に対する感受性を尋ねる質問が,「うるささ」との間に比較的良い対応関係を示した。しかし,Weinstein scaleを構成する10個の質問群の中には,騒音感受性を尋ねる質問として不適切な質問が4つ含まれることが明らかとなったため,これらの質問を除いた新たな騒音感受性尺度(Weinstein scale 6)を構成した。さらに,過大/過小回答傾向(レポーティングバイアス)の影響を調整した尺度として,Weinstein 6-binaryの尺度も構成した。 改良を加えたWeinstein scaleおよび前述の実験において比較的良い結果の得られた大きな音に対する感受性を尋ねる質問に関して,実験室において各種環境音の曝露実験を行い,妥当性を検討した。その結果,大きな音に対する感受性を尋ねる質問は道路交通騒音のうるささとの関連において必ずしも良い対応が得られなかった。Weinstein scale 6もしくはWeinstein scale 6-binaryはいずれも各種環境騒音との間に比較的良い相関関係を示し,これらの尺度は騒音感受性の評価に利用できると考えられた。
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