平成16年度は、前年度に引き続いて、まず遺伝子多型解析として解析対象遺伝子を拡大して研究を遂行した。妊娠中毒症妊婦およびコントロールとしての正常妊婦を対象とし、本研究の意義・目的・方法について口頭ならびに文書で十分説明した上で、インフォームド・コンセントを文書で得た後、末梢血を採取しゲノムDNAを抽出、PCR-RFLP法、mismatch PCR-RFLP法、SNaP ShotTM法、direct sequence法などの中から多型の構造により適切な方法を選択し解析した。しかしながら、妊娠中毒症との関連の報告がある遺伝子多型、妊娠中毒症との関連の報告がある蛋白をコードする遺伝子上の多型、循環器疾患との関連の報告がある遺伝子多型、計32多型を検索したものの、従来報告されていない新しい本症関連遺伝子多型は同定できなかった。 一方、プロテオーム解析についても、さらに症例数を増やし異常な蛋白スポットを検索した。具体的には、これまで行ってきたように二次元電気泳動システムを用いて得られた2-D PAGE像を電気泳動画像解析システムにて解析した。その結果、新規関連蛋白の候補として計3スポットを同定できた。今後、そのスポットを示す蛋白の特定を行う予定である。 本症患者の環境要因、生活習慣の調査については、すでに検体を採取してある重症妊娠中毒症妊婦についての再調査を終了した。加えて新たな患者については、検体末梢血の採取とともに食生活や運動量、生活環境や生活上のストレスの有無について直接面談して情報を収集した。現在、遺伝素因と生活環境要因を組み合わせた新しい妊娠中毒症予防戦略を構築し、その有用性を検討する前向き研究の計画を立案中である。 以上のように、今年度は概ね当初の計画通りに研究を遂行することができた。
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