研究概要 |
妊娠中毒症(現 妊娠高血圧症候群)の発症に関与する遺伝素因を分子遺伝学的に解明していくとともに、さらにライフスタイル関連の諸因子を解析して、本症の新しい予防戦略を構築することを目的として、本症関連遺伝子を遺伝子多型解析およびプロテオーム解析で同定するとともに、本症患者の環境要因・生活習慣を調査しその遺伝素因との交絡・共同作用について解析した。 その結果、遺伝子多型解析では新しい妊娠中毒症関連遺伝子を同定することはできなかったものの、プロテオーム解析の成果をもとに、蛋白データベース、質量分析計、ウエスタンブロット法による解析、ならびにイムノアッセイ法を用いた患者血清とコントロール妊婦血清における量的差異の確認を行った結果、clusterinが妊娠中毒症と関連する蛋白であることが初めて示された(Proteomics.2004)。また、本症と動眼神経麻痺の関連について新たな知見を得ることができた(Hypertension in Pregnancy,2006)。 一方、本症患者の環境要因・生活習慣の調査では、従来から指摘されている高血圧や妊娠中毒症の家族歴、肥満、塩分の過剰摂取が本症患者で多い傾向は認められたものの、これらの環境要因・生活習慣と、我々が過去に報告してきた様々な本症関連遺伝子多型(Journal of Medical Genetics,1997; Journal of Human Genetics,2000; Thrombosis and Haemostasis,2001; Journal of Human Genetics,2002)との交絡・共同作用については、症例数が少ないこともあり新しい知見を得るには至らなかった。 本研究は、個人の遺伝子型に応じた効果的な個人化医療としての妊娠中毒症の予防戦略構築につながるものであり、今後症例数を増やし引きつづき研究を遂行していきたいと考えている。
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