研究概要 |
本研究の最終の目的である、肝がん死亡の減少を目的とした検診の有効性を数量化して客観的に評価することを達成するために、今年度は下記に示す研究を行い成績を得た。 1.【HCVキャリア数の推計】 日赤との共同研究(了承済み)により、1995年1月〜2000年12月までの計3,485,648本の初回供血者の資料をもとに、性・出生年ごとにHCV抗体陽性率および、HCVキャリア率の算出を行った。全体ではHCV抗体陽性率は0.49%(男性0.48%、女性0.50%)であった。しかし、出生年別にみると、2000年時点の年齢に換算した場合16-19歳では0.13%、20歳代では0.21%、30歳代では0.77%、40歳代では1.28%と年齢階級が高い集団ではHCV抗体陽性率も高くなり、50歳代、60歳代ではそれぞれ1.8%、3.38%の値を示した。さらにこの傾向は、男女とも同様に認められることが明らかとなった。得られた成績と、国勢調査による当該人口の資料から、日本における性・5歳刻みの年齢別にHCVキャリア数の算出を行った。その結果、15歳から69歳の年齢集団93,325,570人中HCVキャリアは884,954人(95%信頼区間72.5〜104.5万人)であり、男性では46,638,636人中464,363人(37.8〜55.1万人)、女性では46,686,934人中420,591人(34.7〜49.4万人)と推計することができた。 2【HCVキャリアの自然史のモデル設定および介入がある場合のモデルの設定】 HCVキャリアの自然史のモデルについては、HCVキャリア・慢性肝炎・肝硬変・肝がん・治癒という5つの病態を設定し、肝がんを終末像とするモデルを構築した。このモデルの妥当性を検討した結果、報告された臨床病理学的治験成績と対比してその妥当性が認められた。介入のあるモデルについては、抗ウイルス療法および、肝庇護療法を合理的に行った場合の肝病態の年時変化を元に数理モデルの構築を行った。
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