研究概要 |
下記の項目について研究を行い、成果を得た。 1)わが国に自覚症状の無いまま潜在していると考えられるHCVキャリア数は16〜69歳では88.5万人(95%Cl:72.5〜104.5万人)、男性では46.4万人(37.8〜55.1万人)、女性では42.1万人(34.7〜49.4万人)であった。このうち、40〜69歳の年齢層に潜在するHCVキャリアは75.9人(全体の85.8%)と、肝発がんの好発年齢に近づく40歳以上の年齢層に偏在していることが明らかとなった。 2)上記推計した40〜69歳のHCVキャリア集団75.9万人(男性397,035人、女性362,282人)のうち、慢性肝炎と推計されたのは男性263,504人、女性193,176人、肝硬変は男性6,274人、女性4,364人、肝がんは男性5,585人、女性0人であった。しかし、この集団が治療を受けないまま10年経過し50〜79歳に達した時点で、男性43,474人、女性57,528人が肝硬変に、男性46,796人、女性21,779人は、肝がんに進展していると推計された。 3)同集団に対して合理的介入(治療)を行い、10年が経過したと仮定した場合には、IFN治療が著効と判定(すなわち、C型肝炎ウイルスが体内から排除され、肝がんのリスク集団から外れた)されたのは、男性81,966人、女性83,916人と推計された。また、10年経過後の肝がん罹患数は、男性34,276人、女性15,066人と推計され、前項の無治療で自然経過した場合と比べ、男性12,520人、女性6,713人の減少が認められた。この両者の推計値を加算すると、10年間に限った肝炎ウイルス検診の効果は、2000年時点の年齢が40〜69歳のHCVキャリア759,317人に対し、「185,115人」(24.4%)にものぼることが明らかとなった 本研究は、C型肝炎の自然経過モデルを、潜在するHCVキャリア推計数に応用し、2002年から開始された肝炎ウイルス検診の有効性を具体的な数値を用いて初めて示したものであると考える。
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