研究概要 |
妊娠ラットにTBT chlorideを餌中に混ぜて(0,50,125ppm)投与し、生まれてきたオスのF1ラットについて、生後1,2、3週それぞれの時点で処理して大脳皮質及び中脳のサンプルを得た。サンプルからtotal RNAを抽出し、cRNA増幅後、蛍光標識した。これにDNAマイクロアレイを行い、対照群から調製した標識cRNAと二色競合ハイブリダイゼーションを行って遺伝子発現の差異を検討した。発現に差が見られた代表的な遺伝子に関してはリアルタイムPCRを用いて確認を行った。その結果、TBTに曝露されたF1ラットでは、50ppm群、125ppm群ともに大脳皮質では遺伝子の発現変化が余り見られなかったが、中濃度では50ppm群でも多数の遺伝子に発現変化が見られ、125ppm曝露群では更に多くの遺伝子で発現変化が見られた。特にドーパミンの合成や代謝に関わる遺伝子群やミトコンドリア関連遺伝子群が顕著に発現低下していた。この結果はリアルタイムPCRによる検討でも確認された。 また妊娠マウスにTBT chlorideを0,25,50,125ppm投与してF1マウスについて、神経伝達物質及びその代謝産物を指標にして発達神経毒性を検討した実験、大脳から調製したN-methyl-D-asparetate (NMDA)受容体に対する特異的リガンドの結合を指標にした実験に関し、総括し、論文にまとめた。生後3週の時点でドーパミン代謝の変化や、NMDA受容体への結合の低下が曝露群で観察された。また同じ方法の投与で、免疫系への影響の実験を総括し、論文にまとめた。感染防御について免疫毒性が示された。
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