カドミウム(Cd)妊娠期曝露による母体および胎仔へのCdの体内動態に及ぼす鉄およびメタロチオネイン(MT)の影響を鉄欠乏MT-I/II欠損マウスを用いて検討した。雌性MT-I/II欠損マウスおよび野生型マウスに6週齢時から低鉄食あるいは正常鉄食(低鉄食に通常の鉄レベルになるように鉄添加)をそれぞれ2週間与えた後に、雌雄番いで1日間交配し、妊娠1日目から50ppmのCdを含む飲料水を与えた。妊娠期間中も低鉄食あるいは正常鉄食をそれぞれ与えた。妊娠19日目にエーテル麻酔下で心採血後に母体臓器(肝臓、腎臓)および胎仔を摘出した。摘出した胎仔については、さらに肝臓を摘出した。各臓器中Cd濃度を硝酸-過酸化水素水で湿式灰化後にICP-MSを用いて測定した。 その結果、妊娠期にCdを曝露した低鉄/野生型マウスの母体肝臓および腎臓並びに胎仔肝臓中Cd濃度は、ともに正常鉄/野生型マウスに比べて有意に増加した。一方、Cd妊娠期曝露した低鉄/MT-I/II欠損マウスの母体肝臓および腎臓中Cd濃度は、正常鉄/MT-I/II欠損マウスに比べて有意に増加したが、胎仔肝臓中Cd濃度は両マウス間で有意な差は認められなかった。また、野生型マウスとMT-I/II欠損マウスで臓器中Cd濃度を比較すると、MT-I/II欠損マウスの母体肝臓および腎臓中Cd濃度は、野生型マウスに比べて正常鉄食群並びに低鉄食群ともに著しく減少し、胎仔肝臓中Cd濃度は著しく増加した。 以上の結果より、鉄欠乏状態やMT欠乏状態は、胎仔中Cdの蓄積を増加させることが明らかとなった。従って、鉄およびMTは、ともに胎仔へのCdの蓄積抑制に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また、胎仔へのCdの蓄積には、鉄よりMTの方が深く関与していることも示された。
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