研究課題
ヒ素は発癌物質であると認められているが、その発癌のメカニズムや究極の発癌物質についてはわかっていない。これまでの研究で、われわれは、ラットにジメチルアルシン酸(DMAV)を長期投与すると膀胱発癌を引き起こし、その尿中より未知ヒ素代謝物(M2)が、糞中より未知ヒ素代謝物(M3)が多く検出されることを報告した。また、この代謝物の生成には大腸菌が関与し、Cys要求性であることも明らかにした。昨年度の研究では、大腸菌存在下、DMAVに対しCysの比が2〜3の時にM2の生成が最大になること、また、ジメチルアルシナス酸(DMAIII)を経てM2、M3と変化することを明らかにした。さらに、M2が分子量154でイオウを1つ含む化合物であることも明らかにした。今年度の研究ではin vivoでのDMAVの代謝におけるCysと大腸菌の役割、尿中からのDMAIIIの検出およびヒ素代謝物の細胞毒性に関する研究を行った。ラットにおけるDMAVの代謝実験で、過剰のCysと大腸菌投与によりM2からM3への生成量が上昇した。このことは、in vivoの結果がin vitroの結果と一致することを示しており、大腸菌による未知ヒ素代謝物の生成にCysが大きく関わっていることが今回in vivoでも初めて証明できた。また、3価のメチルヒ素化合物を定量するため、キレート抽出とLC-ICP-MSによる測定を組み合わせた方法を確立し、DMAV投与ラットの尿の分析を行った。その結果、DMAIII、MMAIII、トリメチルアルシンを尿中より検出した。細胞毒性の実験では、DMAIIIおよびM2を多く含む試験溶液は、強い細胞毒性、強い分裂中期捕捉性、高率の4倍体および異数体生成能、有意な染色体異常、SCE誘起性を示した。このことは、これらの化合物が発癌に関わっている可能性を示唆している。
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