カドミウム(Cd)をラットに対して3.Omg/kg、マウスに対して2.5mg/kgの投与量で皮下注射したところ、いずれにおいてもCd投与後18時間をピークに末梢血中好中球の増多が起こったが、マウスの方がよりその効果は強かった。また、マウスにおいて、Cd投与後には末梢血中のG-CSFは著明に上昇したが、その経時的変化は末梢血好中球とほぼ一致していた。末梢血GM-CSFは極めて低濃度ではあるが二峰性の上昇が見られた。 一方、マウスに対してLPSを0.5、5mg/kgの2つの投与量で腹腔内注射したところ、いずれに場合でもCd投与よりも早い12時間をピークとする末梢血好中球増多が起こった。また、マウスにおいて、LPS投与後にはCdと比較しても極めて早い時間での末梢血中G-CSFの上昇が観察された。すなわち、CdとLPSによる末梢血中のG-CSF上昇には大きな時間的ズレがあった。末梢血GM-CSFは投与後2時間で急峻なピークを持つ上昇が見られた。 マウスにおいて、LPSに対する特異的な中和作用を持つ抗生物質であるポリミキシンBの前投与によってLPSによるG-CSF上昇は約10分の1程度にまで抑制されたが、Cdによるそれには抑制効果は見られなかった。 以上の結果より、CdによるG-CSF、GM-CSF産生ならびに末梢血中好中球の増多等の急性炎症の発症には、LPSのような一般的な炎症反応の場合とは異なるメカニズムが働いている可能性が示唆された。
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