マクロファージは、細胞内レドックス状態によりTh1/Th2バランスを規定し、アレルギー疾患、自己免疫疾患などを制御する重要な細胞である。我々は、脱共役タンパク質2(UCP2)がマクロファージのLPS応答における細胞内活性酸素の産生調節をしていることを明らかにし、細胞内レドックス状態の制御にも関与していることを示唆した。一方、Th1/Th2バランスはβ_2アドレナリン受容体(β_2AR)を介した情報伝達系の調節を受けていることが報告されている。平成15年度の研究で、Th2優位なBALB/cマウスにおいて運動トレーニングがマクロファージのβ_2ARの発現レベルを低下し、Th1反応を誘導するインターロイキン12(IL-12)の産生能を増強することを見い出した。平成16年度では、β_2AR過剰発現マクロファージ細胞株(RAWar)を樹立し、β_2AR発現量とLPS刺激によるIL-12産生能の関連を検討した。RAWar細胞で、IL-12のmRNAとタンパク発現量は有意に低下した。次に、テトラサイクリン(tet)リプレッサー発現ベクターをRAWar細胞にコトランスフェクトし、β_2AR発現ベクターにあるtetオペレーター配列を利用した外来β_2ARの発現抑制細胞株を樹立した(RAWar-tetR)。RAWar-tetR細胞のLPS刺激によるIL-12産生能に有意な回復が認められ、運動トレーニングによりTh1反応が亢進することが示唆された。 UCPファミリーの一つであるUCP1はβ_3ARによる発現調節を受けていることが知られている。マクロファージにおいてはβ_2ARがドミナントであることから、β_2ARによるUCP2発現調節系とLPS情報伝達系のクロストークが推測された。
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