研究概要 |
【目的】NK、LAK及びCTLは主に二つのメカニズムで標的細胞を障害する。その1はこれらの細胞内顆粒中に存在するPerforin、GranzymeおよびGranulysinの放出による標的細胞の障害であり(Perforin/Granzymes Pathwayという)、その2はFas ligand/Fas pathwayを介した標的細胞の障害である。申請者はこれまで有機リン農薬がNK,CTL及びLAK活性を有意に抑制し、さらにこれらの細胞中のGranzymeの活性も有意に阻害することを明らかにした。一方Perforin Knockout(PKO)マウスではPerforin/Granzymes pathwayが機能しなくなったため、そのNK,CTL及びLAK細胞がFas ligand/Fas pathwayのみを介して標的細胞を傷害する。そこで本研究では(1)PKOマウスを用いて有機リン農薬がFas ligand/Fas pathwayを障害するか否か(2)有機リン農業がGranulysinへの影響があるか否か、を検討した。 【材料と方法】(1)動物:本研究ではPKOマウスとその対象である正常C57BL/6マウスを用いた。 (2)有機リン農薬:DDVP(Dimethyl 2,2-dichlorovinyl phosphate)を用いた。 (3)NK活性への影響:マウスの脾臓リンパ球にDDVPを添加し、^<51>Cr遊離法で測定した。 (4)LAK活性への影響:マウスの脾臓細胞から得たLAKにDDVPを添加し、^<51>Cr遊離法で測定した。 (5)CTL活性への影響:マウスの脾臓細胞から得たCTLにDDVPを添加し、^<51>Cr遊離法で測定した。 (6)DDVPのGranulysinによるJurkat細胞死への影響:測定系にDDVPを添加し、FACS法で評価した。 【結果と考察】(1)DDVPが正常C57BL/6マウスのNK,CTL及びLAK活性を有意に抑制した。(2)DDVPがPKOマウスのNK,CTL及びLAK活性を有意に抑制することを明らかにした。(3)抗Fas ligand抗体がPKOマウスのCTL及びLAK活性をブロックできることを判明した。これはPKOマウスのNK,CTL及びLAK細胞がFas ligand/Fas pathwayを介して標的細胞を障害することを意味する。(4)LAK活性の阻害においてDDVPと抗Fas ligand抗体との間に相加作用があることも示唆された。以上の結果よりDDVPがFas ligad/Fas pathwayへの障害を介してPKOマウスのNK,CTL及びLAK活性を抑制したと考えられる。(5)有機リン農薬DDVPはGranulysinによる細胞死に対して影響を与えなかった。
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