研究概要 |
Natural killer(NK)、lymphokine-activated killer(LAK)及びcytotoxic T lymphocyte(CTL)は主に二つの機序で標的細胞を傷害する。その1はこれらの細胞内顆粒中に存在するPerforin、Granzyme及びGranulysinの放出による標的細胞の傷害であり(Granule exocytosis pathwayという)、その2はFas ligand(L)/Fas pathwayを介した標的細胞の傷害である。本研究の1年目ではPerforin Knockout(PKO)マウスを用いて有機リン農薬DDVPがFas ligand/Faspathwayへの障害を介してPKOマウスのNK,CTL及びLAK活性を抑制することを明らかにした。2年目ではPCR法及びFlow cytometry法を用いてNK、LAKとCTL細胞内の各種GranzymeのmRNA発現量及びヒトNK,T細胞のPerforin,GranzymeA及びGranulysinの陽性率を解析し、細胞中の各Granzymeの量比及びPerforin,GranzymeA及びGranulysinの陽性率がその細胞の有機リン農薬に対する反応性を左右することも明らかにした。3年目ではDDVPは有意にヒト,NK細胞内のPerforin、Granzyme AおよびGranulysinのタンパク質量及びmRNAの発現量を低下させることが明らかとなり、その機序としてDDVPによるNK細胞の脱顆粒であることが明らかとなった。動物実験ではDDVPが有意にマウスNK細胞、CD8及びCD3陽性T細胞の割合を減少させ、B細胞の割合を増加させたことを明らかにした。結論として有機リン農薬は、以下の機序でNK、LAK及びCTL活性を抑制する。 (1)有機リン農薬は、NK、LAK及びCTL細胞等のGranule exocytosis pathwayへの影響を介してNK、LAK及びCTL活性を抑制する。 (2)有機リン農薬は、NK、LAK及びCTLのFasL/Fas pathwayにも影響を与えてNK、LAK及びCTL活性を抑制する。本研究はスタンフォード大学医学部のKrensky AM教授の協力を得た。
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