研究概要 |
(1)ダイオキシン暴露による胎内環境変化と胎仔の脳発育異常の検討 妊娠ラットを用いて妊娠9日目以降にダイオキシンおよびコーンオイルを経口的に胃ゾンデを用いて10日負荷し、19日目に帝王切開した。新生仔の体重,肝臓,腎臓,脳および胎盤については重量を対照仔ラットと比較したところ、有意に体重が少なく,肝臓や腎臓の重量も少なかった。しかし,脳の重量は体重あたりではむしろ割合が有意に大きく,脳の発達には影響は少なく,全身の発育への影響があるものと考えられた。 (2)体内暴露を受けた新生仔の発育・神経発達などの行動学的解析による検討 胎内暴露を受けた生後4日目から12日間傾斜板による回旋運動を行わせ,運動能力の発達を観察したところ,ダイオキシン暴露群の発達が遅れる傾向が認められた。また,4-6週令のラット仔にシャトルアボイダンスシステムを用いて学習能力への影響を観察した。その結果,電気刺激の回避率は胎生期ダイオキシン暴露群で低く,活動率も低かった。これらのことから胎生期の暴露は生育後の高次脳機能に影響を及ぼす可能性が示唆された。 (3)体内暴露を受けた新生仔の脳重量の剖位別変化 胎内暴露を受けた仔ラットを飼育し,7週令に達した時点で脳および各臓器重量を摘出し、形態的異常や部位別脳重量を暴露の有無で比較したところ,脳,特に大脳皮質,海馬,へん桃体の重量の割合が胎生期ダイオキシン暴露群で有意に少なく,大脳の発達へのダイオキシンの影響が考えられた。しかし,特に形態的な変化は認められなかった。
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