Aldh2欠損マウスによるアルコール性臓器障害の機序解明とその食道癌予防への応用

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15590527
• 研究機関: 産業医科大学
• 研究代表者: 川本 俊弘 産業医科大学, 医学部, 教授 (60177748)
• 研究分担者: 一瀬 豊日 産業医科大学, 医学部, 助手 (80341494) ; 小山 倫浩 産業医科大学, 医学部, 助教授 (00309965)
• キーワード: ALDH2 / CytochromeP450 2E1 / Knock out mouse / 食道癌

研究概要

【背景と目的】1987年にはアルコール性疾患による医療費は一兆円を上回り、アルコール性臓器障害を予防することは社会的・医学的に重要な課題となっている。日本人の約半数に認められるアルデヒド脱水素酵素(ALDH)2遺伝子ヘテロ欠損型とホモ欠損型は飲酒により顔面紅潮などを引き起こすフラッシング症状に関わり、アルコール性肝障害や食道癌発生にも関与すると考えられている。ALDH2欠損者の病因解明のためAldh2欠損マウス(Aldh2 KO mice)を当研究室で作製した(Kitagawa et al.,2000)。今回、野生型(C57BL/6)マウスとAldh2欠損マウスのAldhやCyp酵素の発現を検討するため以下の研究を行った。
【対象と方法】野生型(C57BL/6)マウスとAldh2欠損マウスの肺、心、腎、睾丸、肝、食道、胃、結腸、など各臓器のAldhやCyp酵素の発現を次の方法で検出する。
・両型マウス各5匹のホルマリン固定組織切片からavidin-biotin complex (ABC)法による免疫組織化学染色施行し、Aldh1、Aldh2、Cyp1a1、Cyp2e1とCyp4b1酵素発現の相違を比較検討する。
・両型マウス各5匹のの肝よりミトコンドリアを抽出し、Aldh1やAldh2酵素発現をウエスタンブロット法で検出して比較検討する。
【結果と結論】Aldh2欠損マウスでは,Aldh2発現は認めないもののAldhやCyp酵素は野生型とAldh2欠損マウスで同じように発現していた。今後、Aldh2欠損マウスを用いたアルコール性の臓器障害の機能解析を開始するために、次の究目的である「エタノール投与による野生型マウスとAlsh2欠損マウスの血液、肝や食道などの臓器のエタノール、アセトアルデヒドの変化やAldhやCyp酵素発現の変動の検討」を施行する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Kawamoto T, et al.: "Effects of genetic polymorphism of drug metabolizing enzymes on smoking and drinking."J UOEH. 25. 97-106 (2003)
• [文献書誌] Oyama T, et al.: "Evidence-based prevention (EBP) : Approach to lung cancer prevention based on cytochrome 1A1 and cytochrome 2E1 polymorphism."Anticancer Res. 23. 1731-1738 (2003)
• [文献書誌] Oyama T, et al.: "Lung cancer and CYP1A1 or GSTM1 polymorphisms."Environ Health Prev Med. 7. 230-234 (2003)
• [文献書誌] Yang M, et al.: "Genetic effects on urinary 1-hydroxypyrene levels in a Korean population."Carcinogenesis. 24. 1085-1089 (2003)
• [文献書誌] Yang M, et al.: "Biological monitoring of bisphenol A in Korean population."Arch Environ Con Tox. 44. 546-551 (2003)
• [文献書誌] Kim Y-D, et al.: "Oxidative stress, hogg1 expression and NF-κB activity in cells exposed to low level chronium."J Occup Health. 45. 271-277 (2003)