車室内空気は、内装品等から放散される高濃度の化学物質によって汚染されていることが予想され、乗員への健康影響が懸念される。しかし、その汚染実態に関してはほとんど知られていない。本研究では、国産自家用乗用車において内装品等に起因する化学物質による室内空気の汚染実態を調査し、以下の結論を得た。 1.車室内空気中より多種類(275種)の有機化合物が固定され、その多くは脂肪族及び芳香族炭化水素願であった。また、車室内で多用されるゴムやプラスチックに関連すると推定される特徴的な化合物も多数検出された。 2.車室内空気中において定量された全化合物濃度に占める脂肪族及び芳香族炭化水素類の濃度和の割合は高く、これらが車室内の空気汚染に寄与する主要な化合物類であると考えられた。 3. 室内空気中化学物質濃度に影響を及ぼす主な要因は、納車からの経過日数と室内温度であることが示唆され、車室内の空気汚染は納車直後と夏季において著しいことが明らかとなった。 4.皮革製シートや皮革製ハンドルが装備された新車価格の高い高級車において複数の化合物の室内空気中濃度が高く、車室内空気汚染の差異にはメーカーの違いよりも車格や内装材等の仕様の違いが大きく関与すると考えられた。 5.日常の換気や駐車場所等の使用状況、室内で使用される芳香剤及び喫煙も車室内の空気質に長期的影響を及ぼすことが示唆された。 6.新車として納車された車両の納車当初における室内空気中総揮発性有機化合物(TVOC)濃度は普遍的に厚生労働省の提案する室内濃度目標値を超えており、車室内空気は元来装備されている内装品や部品等から放散される高濃度の化学物質により著しく汚染されていると推定された。 7.乗員への健康影響を考慮した際、室内空気中有機化合物濃度総量の低減化は非常に重要な課題であると考えられた。
|