ディーゼル排気粒子(DEP)の発ガン性はその粒子自体が原因なのか、含有される物質が原因なのかが議論されている。今回は粒子に含まれる物質がその粒子を貪食したマクロファージの活性酸素反応を亢進させ。る場合があるか検討することを目的とした。また、一般的に実験施設で捕集されたDEPを実験 に供することが多いが、今回は、国立環境研究所で抽象されたDEPと実際の大気中浮遊粒子状物質(SPM)との比較をするため、当研究所屋上でSPMを採取し用いた。 DEP、SPM、カーボン粒子、DEPに含まれる変異原性物質(3-ニトロベンズアントロン)をコーティングしたカーボン粒子、シリカ粒子に対するヒトモノサイト誘導マクロファージから生成されるスーパーオキサイドをルシゲニンを用いた発光反応で測定した。また、その実験系で生成されるOHラジカルを2-デオキシーd-リボース法で測定した。各試料とも今回の実験で投与した粒子濃度による細胞毒性はMTT法では認められなかった。 実験の結果、DEPではOHラジカル生成反応が強いが、スーパーオキサイドは検出されなかった。SPMでは高濃度投与より低濃度投与の方がスーパーオキサイドの検出量が多く、OHラジカルも検出された。変異原性物質コーティングカーボン粒子はSPMと類似の反応性だった。カーボン粒子では両者とも反応は 認められなかった。シリカ粒子では量反応関係が保たれたスーパーオキサイド反応が認められた。これらの結果はDEPやSPMに対するマクロファージの活性酸素反応は、単に微粒子に対して起きているのではなく、粒子表面の多環芳香化合物などの有機物が関与していることが示唆された。また、SPMのモデル粒子としては実験的に捕集されたDEPより3-ニトロベンズアントロンをコーティングしたカーボン粒子の方が適している可能性が認められた。
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