本研究の目的は、日本人若年女性のカルシウム摂取量およびビタミンDの栄養状態とビタミンD受容体遺伝子多型の骨密度に対する交互作用を明らかにし、効果的な骨量増加方法をみいだすことである。今年度はビタミンD遺伝子多型の解析を中心に行った。ビタミンD受容体遺伝子Apa 1、Taq 1、およびBsm 1の多型を、restriction fragment length polymorphism(RFLP)法により解析した。食事中のカルシウム摂取量は3日間の陰膳法を用いて、ビタミンDの栄養状態は血中の25(OH)Dを測定することにより評価した。腰椎正面と大腿骨頸部左側の骨密度をDXA法で測定した。Apa 1、Taq 1およびBsm 1のいずれにおいても、遺伝子多型と骨密度に有意な関連はみられなかった。血中25(OH)D_3濃度について、Apa 1多型のAA群における濃度がAa群、aa群より有意に低かった。若年成人女性の大腿骨頸部骨密度に対してカルシウム摂取量とApa 1多型およびTaq 1多型の交互作用がみられた。Apa 1多型のaa群においては回帰直線の傾きが小さかったが、AAまたはAa群においては傾きがより大きかった。Taq 1多型においても同様な結果であった。最大骨量をなるべく増やすためAA型、Aa型またはTt型をもつ者は特に十分なカルシウムを摂取すべきである。また、血中25(OH)D濃度はAA型またはBB型をもつ者でより低く、それらの人は十分な量のビタミンDまたはカルシウムを摂取することが望ましい。
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