研究概要 |
1)青年期における児童虐待防止教育のあり方を検討するため、20歳以下の学生1,445人を対象に、児童虐待の対する関心に関連する要因を調査した。虐待に関する主な情報源は、テレビが95.7%、新聞が44.3%、雑誌・本が19.9%、講義が10.1%であり、看護学生でいずれも多い。72.7%の学生が児童虐待へ関心を持っており、女子学生や2年生で多く、所属では看護や福祉系の学生で多かった。またテレビ、新聞、雑誌などから情報を得ている学生では関心が高く、講義の影響は少ない。生育環境では長子で関心が高く、また家族から受けた傷ついた体験を持っている学生では関心のある学生が多い傾向があった。入学後早期に医療・福祉系以外の学生の虐待に対する関心を高め、さらに正しい情報が得られるような学校での教育プログラムが必要であると考えられた。 2)25歳以上の成人701人(男性28.2%;女性71.8%)を対象に、身体的虐待・心理的虐待・ネグレクト・性的虐待の行為を虐待と認識する割合と多重ロジスティック回帰分析により一般市民や多種職種間での虐待認識とその判断に影響を及ぼしている背景因子を解析した。身体的虐待に対する認識は女性で高く、また体罰的行為で高くしつけ的内容の行為では低い。心理的虐待に対しては不適切と判断する人が多く、特に一般職で虐待常識が低い傾向にある。ネグレクトでは虐待とする割合が心理的虐待の場合より多いが、45歳以上では低い。しかし、生命に関わるネグレクト行為では犯罪とする割合が増加する。性的虐待では、犯罪かつ虐待とする割合が多く、女性や虐待に関心のある人で多い傾向がある。いずれの虐待認識においても育児経験や養育環境による有意な影響はみられなかった。
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