児童虐待を早期に発見するシステムを構築するために、学生や一般市民の虐待に関する認識や意識を調査した。2学年女子や看護・福祉系の学生がより関心を抱いていた。講義や授業よりテレビ、新聞、雑誌から情報を得た学生が虐待に関心があった。子どもの時に傷ついた体験があった場合は、より虐待に関心があった。さらに、傷ついた体験を否定的に捕らえ許せないと思っている人では、虐待に対し厳しい感情を抱いている。学校で子どもとの触れ合い体験や育児に関する学習を経験すると、育児に対し肯定的な感情を抱き、将来の子育てを前向きに考えている。育児中の軽度虐待傾向は両親間で正の相関があり、家族レベルでの虐待傾向は、父親の子どもが面倒な存在と感じることに強く影響を受けており、母親の受容的育児感情は虐待傾向を抑制していた。一般市民が児童虐待を発見し、専門機関に通告する場合、多くの人が不安や当惑を感じており、早期介入が困難な原因になっている。 以上のことから、一般市民が虐待を早期に発見し通告するためには、学生時代から育児や虐待に関心を持ち、育児の際には育児困難にあっても、しつけと軽度虐待の区別を認識できる準備性が必要である。また、虐待を通告際の不安感を抱かないような行政の取り組みが求められる。
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