1 わが国における産科施設の分布 わが国における産科施設分布状況の可視化を行い、過疎地域において産科施設空白域が各所に存在していることが明らかとなった。 2 過疎地域における産科施設利用者 岡山県の都市部と過疎地域で過去3年間に出産した人を対象として調査を行った。通院時間や通院に伴う負担感について、都市部と過疎地域との著しい格差が明らかとなった。また、過疎地域では通院時間30分を境として、負担を感じる妊産婦が有意に増加することが明らかとなった。 3 過疎地域に対する産科施設の状況 中国四国地方の産婦人科施設を対象として調査を行った。回答の得られた施設のうち約半数は分娩取扱いを行っておらず、そのさらに約半数は最近10年間に分娩取扱いを中止した施設であった。また、約5%程度の妊産婦が1時間以上の遠距離の通院をしているものと推定された。1時間を越える遠距離の通院には臨床的なリスクがあると考える医師が約半数を占めていた。 4 まとめ 本研究を通じて、過疎地域の妊産婦が通院に際して負担、不安感を抱いていること、産婦人科医側も遠距離通院には臨床的なリスクがあるものと懸念を抱いていることが明らかとなった。また、今後一層、状況が悪化する可能性があるものと懸念された。しかし、同様の問題を抱える小児科救急医療ほどは、本問題は一般への認知度が高くないものと思われる。本研究の課題とした過疎地域の産科医療が抱える問題を広く一般に周知させるとともに、適切な医療施設配置実現に向けた取り組みが不可欠である。
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