研究概要 |
チェルノブイリ原発事故が住民に及ぼした精神的影響の大きさを明らかにすることを研究目的とする。対象者は、チェルノブイリ原発の所在地であるプリピャチ市を含め、いわゆるチェルノブイリ30-km圏内からキエフ市に避難してきた、事故当時15-45歳の女性である。2003年にウクライナ放射線医学研究所と共同でこれらの対象者に対して実施した、乳がんのリスク要因に関する面接調査に参加した2,409人のうち、1,593人がGoldbergのGeneral Health Questionnaire 12項目版(GHQ-12)、不安尺度、および抑うつ尺度を用いた精神的健康状態の測定にも参加した。GHQ-12の総得点が4点以上の者をGH-12高得点者、3点以下の者をGHQ-12低得点者として分析し、以下の結果を得た。 1.対象者の調査時平均年齢(標準偏差)は、45.6(8.3)歳であった。GHQ-12高得点は298人(18.7%)に認められた。GHQ-12高得点の頻度には年齢差は認められなかったが、疾患との関連については、大きな差が認められた。26人のがん(白血病を含む)患者のうち23人(88.5%)がGHQ-12高得点者であったが、がんでない対象者1,567人のうちGHQ-12高得点者は275人(17.6%)であった。一方、良性腫瘍については、腫瘍のある者445人のうち89人(20.0%)、腫瘍のない者1,148人のうち209人(18.2%)がGHQ-12高得点者で、腫瘍の有無による差は認められなかった。 2.不安状態は838人(52.6%)に認められ、抑うつ状態は731人(45.9%)に認められた。年齢および疾患との関連については、GHQ-12高得点の場合と同様の傾向が認められた。
|