インフルエンザワクチンは、高齢者などのハイリスクグループの肺炎や死亡に対して予防的に働くことが、欧米などの先行研究では示されている。高齢者では肺炎が長引きやすく、抗生物質を長期に投与されていることが多いためにMRSA感染のリスクは高い。今回、我々は、インフルエンザワクチンがインフルエンザ流行期間の肺炎を予防し、このことにより、抗生物質の使用が減り、MRSA感染の発生が抑えられるのではないかと考えた。 この仮説を証明するために、札幌市内の4つの高齢者入所施設で、入所者のワクチン接種状況とインフルエンザ流行期間(平成15年11月から16年3月)の発熱、肺炎の発生とMRSA感染などについて現在調査中である。今、データを集めているところであり、解析等は次年度行う予定である。インフルエンザの北海道での流行のピークは平成16年2月であるが、施設での大流行はいまのところ認めていない。対象者は417名、平均年齢は85歳、ワクチン接種率は93%である。ワクチン接種が発熱や肺炎を予防し、ひいてはMRSA感染に対して、予防的に働くという仮説を証明するための調査を現在行っている。経年的なデータの蓄積を行っているところである。複数年継続することにより、症例が蓄積され、結果が出やすくなると考えられる。
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